地域ドメイン料理の謎:北海道帯広市「豚丼」


 北海道を代表する料理といえば、ジンギスカン!・・・・なのだが、これはあまりにも有名。「地域ドメイン料理の謎」を追及するものとしては、あえてこの有名料理は外してもっと地域密着型の料理を紹介しよう。
 北海道東部の酪農地帯にある帯広市の駅前に立つと、異様な看板が目に付く。その 看板には、一様に「豚丼」と書かれており、隣の(ちょっと遠いけれど)釧路市から きたものでも「なにこれ!」と思うほどである。とにかく、豚丼のお店が乱立しているのだ。
 この豚丼、実は20年ほど前までは、私の大好物だった。帯広市に住んでいたわけで はないが、私が住んでいた釧路市にも当時から豚丼を提供するお店があり、少なくと も道東地方(北海道東部)では広く知られた料理だったのである。しかし、それ以降 関東に住んでからは「豚丼」の文字を見ることも無く、ほとんど頭の中では忘れ去っていた。

 豚丼の名前を久々に思い出したのは3年前、スーパーの焼肉のタレのコー ナーに「豚丼のタレ」という文字を発見したとき。そしてさらに驚いたのは、同じ時 期に東京都八王子で「豚丼」の看板を見てしまったときだった。長い時間をかけて、豚丼は関東まで進出してきたのである。

 豚丼の発祥は、帯広市駅前の「ぱんちょう」(創業昭和8年)という食堂である。
  このお店はすでに観光名所と化していて、写真のように行列が切れることがない。 実はこのお店、 地元の人はあまり寄らない。といっても、それはこのお店がまずいからではなく、そ もそも豚丼なるものは、地元の人にとってはお店で食べるものではないのである。おいしい豚ロース肉を買ってきて、自分で作った方が安上がりだし、混む店で待たされることも無い。
豚丼発祥のお店「ぱんちょう」

 私も豚丼のタレを手に入れてからというもの、何度も自分で作ってみた。いまは豚丼のタレも無くなってしまったので工夫して作っているが、今日はその作り方をお教えしよう。

  ◆ 豚丼の作り方

材料(4人前)

 ・豚ロース肉薄切り     320g
 ・焼鳥のタレ         適量
 ・塩こしょう          適量
 ・山椒(あれば)       少量
 ・サラダオイル        少量

作り方

1.フライパンにオイルを引き、熱したら軽く塩コショウした豚ロース肉を焼く。
2.片面を焼いたら裏返しにし、焼鳥のタレを振り入れる。
3.少しタレが焦げる程度に熱してよくからめ、丼に盛ったご飯の上に肉を乗せる。
4.山椒を振りかけて食す。

 焼鳥のタレが無い場合は、天つゆを甘めにして使ってもよい。
 好みによっては、七味唐辛子を振りかけて辛めにいただくのもよい。
 また人によっては玉ねぎのスライスを入れたり、白髪ねぎを添えることもある。

 調理はいたって簡単で、5分もあれば出来上がり。うな丼のうなぎが豚肉に変わったという感じだが、この甘辛いタレと豚肉がとてもよく合い、くせになること請け合い。皆さんもぜひ挑戦してみて!

 豚丼発祥のお店「ぱんちょう」では、フライパンは使わず、炭焼きである。じっくりと炭で焼いた豚肉の香ばしさ。 さ すが老舗である。
しかもこのンボリューム!たまりませんね!

 「ぱんちょう」では豚丼が4種類あり、最上、梅、竹、松となっている。松より梅のランクが上なのは、先代の奥様の名前が「ウメさん」だからとか。ちなみにウメさんは今も現役で働いている。

豚丼「竹」(950円)でもこの量

 ところで、なぜ「豚」なのだろうか?豚肉を使った丼では「他人丼」(卵と豚肉)があるが、これもあまりメジャーとはいえない。メジャーといえばやはり牛丼だが、北 海道では肉というと豚か鶏肉という時代が長かったのである。肉屋さんでも牛肉を置いているところは少なかった。だから、北海道ではすき焼きというと豚すきであり、 しゃぶしゃぶも豚が多い。牛よりも豚のほうが手に入りやすくなじみがあったというのが、豚丼繁栄の理由である。
いまやっと関東に進出してきた豚丼、果たして浸透できるかどうか・・・




写真提供   「ヌプカ(*)編集室」星野恵介氏  

(*)「ヌプカ」「北海道発、おもしろ不思議探求マガジン」というテーマで発刊される季刊誌。東京では、青山ブックセンター各店で入手可能

 
「このコラムは、People(現フジテレビフューチャー ネット)のユーザー向けサービス「ハロー!People」のコラムコーナー「ホウ博士のなるほどE話」 に2001年4月24日に掲載されました」